2021年1月1日時点を基準とする公示地価が3月下旬に発表されました。
新型コロナの感染拡大後では初めてとなる公示地価の発表となり、全体としてはマイナス0.6%の下落となったことに注目が集まっています。
これが何を表しているのでしょうか。
前年度まで5年連続でプラス基調で推移を続けてきたことを考えると、地価の上昇は上げ止まったと考えるべきなのでしょうか?
加えて、これからはコロナの影響を受けて下落基調に転換するのでは?との見方もあります。
5年連続プラスから急ブレーキ。コロナ禍の不動産価格はどうなる?
昨年から1年間のコロナ禍を受けての公示地価発表ですが、今回はコロナの影響がどのように不動産価格に影響しているかが明白に数字として現れた、そんな印象を受けました。
5年連続で続伸していた不動産価格は打ち止めされ、全体で0.6%下落。
昨年2020年の9月に発表された基準地価は2020年7月1日時点の公示地価なので、今回発表された公示地価はコロナの影響後の全てを織り込んでいると言えます。
そもそも地価公示価格とは何なんでしょうか?
日本を代表する地価評価指標の一つで、不動産鑑定士などの鑑定結果を参考にして土地鑑定委員会が毎年発表しています。
この公示地価は一般の土地取引価格の指標として使われるだけでなく、公共用地の取得などの際にも価格算定基準になっています。つまりこの価格が下がるということは「土地取引などの価格は今後下落していきますよ」ということになるんですね。
あくまでもマイナス0.6%の下落というのは全体平均の話です。次に細かい内訳を見ていきましょう。
大きく下落している商業地。住宅地は後半からは若干だけど持ち直している?
2020年1月にコロナウイルスの感染拡大が始まりました。
地価の推移、変動率がどうなっていたかを半年ごとに商業地と住宅地で分けてみると以下のようになります。
赤色が「住宅地」、青色が「商業地」です。 (単位:%) #都道府県別地価調査 国土交通省 令和3年地価公示概要より
前半 | 後半 | 年間 | 前半 | 後半 | 年間 | |
全国 | -04 | 0.2 | -0.2 | -1.4 | 0.0 | -1.4 |
三大都市圏 | -0.6 | 0.1 | -0.6 | -1.9 | 0.0 | -1.9 |
東京圏 | -0.6 | 0.1 | -0.5 | -1.5 | 0.0 | -1.5 |
大阪圏 | -0.4 | 0.0 | -0.5 | -2.2 | -0.6 | -2.8 |
名古屋圏 | -1.2 | 0.3 | -0.9 | -2.6 | 0.9 | -1.8 |
地方圏 | -0.1 | 0.3 | 0.2 | -0.7 | 0.0 | -0.8 |
地方4市 | 1.0 | 1.5 | 2.4 | 0.7 | 2.2 | 2.9 |
その他 | -0.2 | 0.1 | 0.0 | -0.9 | -0.3 | -1.2 |
コロナが始まったのが2020年1月ですから、前半の下げは当然と言えるかもしれません。
しかし、私が注目しているのは後半のプラス表示です。特に黄色マーカ−の地方の価格推移は顕著に回復しているように見えます。
赤色の「住宅地」と青色の「商業地」のデータをご覧いただくと分かるとおり、前半分の落ち込みのおかげで全体平均は通年を通してはマイナスになったものの、後半ではしっかり持ち直しているんですね。
しかし、違った見方として専門家の間では「戻りが鈍い」という指摘もあります。
これは「値段が上がるのはまだ当分は先になるだろう」と考えた投資家たちの売り物件で影響で商業地の価格がもう一段下がるだろうという見方です。
投資家の意見はともかく、「住宅価格」と言う観点からいくと価格の推移はコロナの影響をあまり受けていないということも考えられます。
ではなぜ地方の地価は後半から持ち直していったのでしょうか?
影響は限定的か?生活必需品の住宅は一定の需要がある?
2021年5月の現状では、感染力の強い変異株による新型コロナウイルスの第四波が感染拡大中で、世界中で猛威をふるっています。
となると、日本国内の商業地を中心としたインバウンド需要はほとんど見込めないでしょう。
また、東京オリンピック・パラリンピックの開催も危ぶまれている現在において、商業地の地価はさらに落ち込むことさえ考えられます。
一方、住宅地は全体としてはマイナスに落ち込んだところもあったものの、特に地方4市ではコロナ影響後でさえも半年、通年を通してマイナスになっていません。つまり内部的な下落が限定的だったということです。
理由の一つとして考えられるのが「住宅が生活必需品であること」が挙げられます。
マイホームへの一定の需要は底堅く存在し、不景気や景気に多少は左右されるもののコロナ禍でも価格を底支えしたような形になっているのだと思います。
もちろん、今後のパンデミックの影響によっては雇用情勢が一層悪化して所得状況に悪影響が及ぶようであれば様子が変わってくるかもしれません。
しかし、直近の雇用関連統計を見ると有効求人倍率と完全失業率は最悪期を脱しつつあります。
この調子で雇用環境が安定すれば住宅市場も徐々に回復基調を強めるのではないでしょうか?
結論、今後の住宅価格はどうなる?コロナ禍の不動産価格の推移は未知数が多い。
ウッドショックを始めとした原材料費の高騰によって住宅価格自体は上昇傾向にあるのが個人的な印象ですが、それに加え工期が長期化しているように感じています。
特に木造住宅の工期は未知数になってしまっているケースもあり、2021年5月着工で完成予定が2022年の春頃という話も聞きました。
それに加えてコロナの影響もあり、人員の確保や人件費の支払いを考えると今後の住宅価格はコロナ前と変わらず若干ではあるが上昇傾向になっていくのかな?というふうにも感じます。
しかし、コロナの影響で世間一般的な世帯の収入は減少傾向にあるともいえます。
住宅を購入して頂けるお客さまがあってのハウスメーカーですから、いくら原材料費の高騰や工期の長期化があるとはいえそうそうに価格を上げられないとなると・・・。将来的には未知数な部分が多いですね。
ちなみにですが、商業用オフィスの2008年のリーマンショック時の平均空室率の推移を見ると、もっともひどくなったのは2010年6月の9.14%です。ビル全体の空室率が全体の10%弱という数字はかなり悲惨な数字と言えます。
肝心のリーマンショックを受けて、最悪の数値が出たのがその2年後ということを考えてみると、コロナ禍の影響はこれからさらに拡大するのかもしれない、とさえ感じます。なぜならパンデミックには終わりがないからです。
オフィスの平均空室率が2年後に最悪になる、とういことは当時の景気悪化の影響のピークは2年後に来た、とも言えます。あくまで不動産業の目線から見ると、ということになりますが。
今後の住宅価格の推移についても逐一チェックしていますので、何かご質問がありましたらいつでもご相談ください。
最後までお読み頂いてありがとうございました。